虫歯を放置するとどうなる?リスクや死亡率・手遅れにさせないための治療法や費用を解説

放置して悪化したひどい虫歯

「放置している虫歯が気になるが、今さら歯医者に行くのが恥ずかしい」
「痛みがあるけど、歯医者が怖くて苦手で…」

など、虫歯があることは自覚しているものの、歯科治療への苦手意識や恐怖心がある方、仕事や育児で忙しく歯科医院に行くタイミングを逃してしまった方は、実は少なくありません。

虫歯を放置してしまった場合でも、さまざまな方法で治療が可能です。

この記事では、虫歯を放置するリスクや、進行度別の症状、放置してしまった虫歯治療の選択肢や費用まで詳しく解説します。

虫歯は放っておいて自然に治ることはありません。手遅れにさせないためにも、「今気づけてよかった」と思い直して、ぜひ歯科医院へ足を運んでみてください。

虫歯は放置して自然に治ることはない

放置した虫歯が痛む女性

虫歯は風邪とは違い、安静に過ごしたとしても自然に治ることはありません

虫歯菌によって溶かされた歯は再生せず、放置すればするほど歯質が失われ、最終的には歯の神経へ進行していきます。

「歯が痛かったが、突然痛みがなくなった」というケースがありますが、これは虫歯が治ったわけではなく、虫歯が進行し神経が死んでしまった可能性があります。

このようなケースでは歯を残すのが難しいケースもあり、虫歯による抜歯を避けるためには、適切な治療が必要です。

虫歯を放置するとどうなる?5つのリスク

隣り合う歯にうつった虫歯

虫歯を放置すると、痛みの他にもさまざまなリスクが生じます。

  1. 悪化して強い痛みが起こる可能性がある
  2. 歯の神経が死んでしまう
  3. 抜歯しなければならなくなる
  4. 口臭や見た目への影響などコンプレックスにつながる
  5. 全身に悪影響を及ぼすリスクがある

代表的な上記5つのリスクについて、それぞれ詳しく解説します。

悪化して強い痛みが起こる可能性がある

虫歯は初期段階では痛みはありませんが、進行して象牙質や神経に到達すると、ズキズキと強い痛みが起こることがあります。

歯の周囲だけでなく顎まで痛みが及んだり、頭痛が起こる方もいます。

夜も眠れないような激しい痛みが起こり、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

歯の神経が死んでしまう

虫歯が神経まで到達すると炎症によって痛みが起こりますが、これをさらに放置すると歯の神経が壊死してしまうことがあります。

神経が死ぬことで痛みを感じなくなりますが、治ったわけではなく、むしろすぐに治療が必要な状態です。

放置すると感染が広がり他の歯にも悪影響を及ぼしたり、歯を残すのが難しくなってしまったりする可能性があるため、なるべく早めに歯科医院を受診しましょう。

抜歯しなければならなくなる

小さな虫歯であれば詰め物、大きな虫歯であれば被せ物で治療を行いますが、虫歯が進行すると、歯を残すこと自体が難しくなります。

歯根がボロボロになると、歯を支えられなくなってしまい、抜歯が避けられません。

歯は抜けたままにしておくと、「歯並びが悪化する」「噛み合わせが崩れることで顔の形が変わる」「食べ物がきちんと噛めない」など、多くのデメリットがあるため、失った機能を補う補綴治療が必要です。

補綴治療には、入れ歯・ブリッジ・インプラントなどの選択肢がありますが、保険適用されない治療もあり、費用が高くなってしまうことがあります。

口臭や見た目への影響などコンプレックスにつながる

虫歯が進行すると、以下のような理由から腐敗臭に似た強い口臭が発生することがあります。

  • 歯に空いた穴に食べかすや汚れが詰まる
  • 歯の根元に膿が溜まる

虫歯による口臭は独特で、よく「生ゴミの臭い」「硫黄のような臭い」「腐った卵の臭い」といわれます。

また、虫歯によって黒ずんだ歯や崩れた歯があったり、抜けてしまったりすると、笑顔を見せることに自信が持てず、人前で話すことすらストレスになってしまうかもしれません。

全身に悪影響を及ぼすリスクがある

虫歯を放置していると、細菌が血流に乗って全身を巡り、誤嚥性肺炎や糖尿病、動脈硬化症、脳卒中などのリスクを高めることが指摘されています。

通常、血液の中に細菌が入ってきても白血球が感染を抑えますが、免疫力が弱っていると敗血症(感染が全身の臓器が機能不全に陥る重篤な病気)になってしまうこともあります。

また、妊娠中の方も注意が必要です。

ひどい虫歯がある場合、同時に歯周病も進行している可能性がありますが、妊娠中の歯周病は早産や低体重児出産のリスクを高めるといわれています。

【進行度別】虫歯の5段階と症状

虫歯の進行段階のイラスト

虫歯は、進行度別に5段階に分けられ、それぞれ症状や治療法が異なります。

以下は、虫歯の段階と痛み、主な治療法の比較表です。自分の症状に近いものがあるか、確認してみましょう。

段階痛み・症状主な治療法
CO:初期虫歯なし・フッ素塗布
・ブラッシング指導
C1:エナメル質の虫歯ほぼなし、あっても軽度・フッ素塗布
・ブラッシング指導
・詰め物(レジン、銀歯)
C2:象牙質の虫歯冷たいもの、甘いものなどがしみる・詰め物(レジン、銀歯)
C3:神経まで達した虫歯・激しく痛むことがある
・歯茎が腫れることがある(根尖病巣、内歯瘻・外歯瘻)
・根管治療+被せ物
C4:歯根まで到達した虫歯・激しく痛むことがある
・神経が死んでしまい痛みが消えることがある
・歯茎が腫れることがある(根尖病巣、内歯瘻・外歯瘻)
・根管治療+被せ物
・抜歯+歯牙移植or補綴治療

CO・C1は初期の虫歯で、痛みがまだ無く、削らずに治せることもあります。

C2は歯の表面のエナメル質を突き抜け、象牙質まで達した段階で、冷たいものや甘いもので痛みが起こることがあります。削る治療が必要ですが、削る量は少なく、詰め物で治療可能です。

C3・C4は虫歯が神経まで達している段階で、強い痛みが起こることもあり、根管治療が必要になります。

C3・C4まで進行した場合、抜歯を回避するには早期治療が重要となるため、気づいた時点で歯科医院を受診して治療を始めましょう。

手遅れにさせないために!放置した虫歯の治療法と費用相場

セラミックの被せ物と歯の模型

虫歯を放置してしまった場合でも、治療は可能です。

進行度や歯・歯茎の状態を確認し、保存治療か抜歯かを判断しますが、治療法によってかかる費用は変わります。

ここでは「歯を残せる場合」と「抜歯が必要な場合」の2つに分けて、代表的な治療法と費用相場について解説します。

歯を残せる場合

抜歯せずに歯を保存できる場合は、「根管治療+被せ物治療」で治療します。

根管治療

根管治療は、虫歯が歯の神経(歯髄)まで達した際に行う治療です。

感染した歯の神経を除去し、根の中をきれいに清掃・消毒して薬剤を詰めることで、歯の根だけを残して修復します。

症状によって異なりますが、治療回数は2〜5回ほどで、費用は保険診療の場合で3,000円〜4,000円です。自費診療の場合は、5万円〜20万円ほどかかる場合もあります。

被せ物治療

虫歯を削り、根管治療を終えた後は、失った部分に被せ物(クラウン)を装着して歯の機能や見た目を補います。

被せ物に使用する素材にはさまざまな種類があり、保険適用と自費診療の場合では大きく費用が異なります

保険適用の硬質レジンジャケット冠や銀歯の場合、4,000円〜7,000円ほどが相場です。

セラミッククラウンやジルコニアセラミッククラウンなど、天然歯のような高い審美性を持つ素材の場合は自費診療となり、10万円〜15万円ほどかかります。

抜歯が必要な場合

歯を残すことが難しい場合は抜歯を行い、「歯牙移植」もしくは「補綴治療(入れ歯・ブリッジ・インプラント)」で治療します。

歯牙移植

歯牙移植とは、失った部分に状態の良い歯(主に親知らず)を移植する方法です。ただし、すべてのケースで歯牙移植が可能となるわけではなく、適応条件が限られます。

保険適用の場合は5,000〜15,000円程度、自費診療では5万円〜30万円ほどが相場です。

補綴治療(入れ歯・ブリッジ・インプラント)

歯を失った場合、欠損を補う方法として代表的な方法が以下の3つです。それぞれ特徴や費用が異なるため、比較してみましょう。

メリットデメリット費用相場
入れ歯・治療期間が短い傾向にある
・保険診療の場合は費用を抑えられる
・取り外し式で手入れしやすい
・金具をかける歯に負担がかかる
・咀嚼機能が低下する
・外れることがあり、異物感を感じやすい
・保険診療:10,000~15,000円
・自費診療:10万円〜50万円
ブリッジ・天然歯と同じような感覚で噛める
・取り外す必要がない
・外科手術が不要
・保険診療の場合は費用を抑えられる
・隣り合う歯を削る必要がある
・支えとなる歯に負担がかかる
・ブリッジ部分の歯を磨きにくくなる
・歯を失った部分の骨が痩せる
・保険診療:17,000円〜25,000円
・自費診療:25万円〜40万円
インプラント・他の健康な歯に悪影響を与えない
・天然歯のような見た目に仕上げられる
・天然歯と同じような感覚で噛める
・異物感、違和感が生じにくい
・外科手術が必要
・治療期間が長くなる傾向にある
・保険が適用されず費用が高額になる
・自費診療のみ:30万円〜70万円

どの方法が適しているかは、その人の希望やライフスタイル、予算などによって変わります。

「本当の歯のような見た目にしたい」「費用を抑えたい」など、希望を歯科医師に伝えて、適した方法を提案してもらいましょう。

放置した虫歯も恥ずかしがらずに歯科医院に行くべき理由

歯科治療について説明する男性歯科医師

「こんなに放置してしまって、歯医者で怒られるかも…」「歯がボロボロで恥ずかしい」などの理由から受診をためらってしまう方は少なくありません。

しかし、歯科医師の本音としては「勇気を出して治療に来てくれてよかった」と思うことがほとんどです。

実際、虫歯が悪化してから受診する患者さんが多く来院しており、歯科医師は重度の虫歯の治療に慣れています。

早く治療を開始するほど、歯を残せる可能性が高くなるため、つらい痛みや悩み、不安から解放されるためにも、一度歯科医院で相談してみるのがおすすめです。

多くの歯科医院で痛みや不安に配慮した虫歯治療が受けられるため、不安な方は前もって「痛みに弱いので配慮してほしい」「痛みの少ない治療が受けたい」などの希望を伝えておくといいでしょう。

虫歯の放置に関するよくある疑問

歯科医療従事者のイラスト

ここでは、虫歯の放置に関するよくある疑問について解説します。

Q:虫歯はどのくらい放置すると死亡の危険がある?死亡率は?

口腔環境、体質、免疫力などは人によって異なるため、どれくらい虫歯を放置すれば死亡のリスクがあるか一概にはいえず、死亡率についても明確な情報はわかっていません。

しかし、放置する期間が長くなるほど、虫歯は悪化し、重篤な症状につながるリスクは高くなります。

一説では新選組の二番隊組長として知られる永倉新八は虫歯が原因の骨膜炎と敗血症を併発して亡くなったといわれており、虫歯の放置は危険といえるでしょう。

Q:虫歯は何年放置するとやばい?10年以上放置するとどうなる?

虫歯の進行は口腔環境やライフスタイルなども影響するため、人それぞれ異なります。

そのため、具体的に「◯ヶ月放置すると神経まで進行する」「◯年以上放置すると歯を失う」などと断言はできません。

ですが、10年以上という長期間にわたり治療せず放置した場合は、虫歯が悪化し、さらに他の歯にも感染が広がっている可能性が高いでしょう。

歯がボロボロになり、神経が死んでしまっているケースも見られます。

Q:虫歯を放置するとがんになる?

虫歯そのものががんになったり、直接がんを引き起こすことはないとされています。

しかし、「不衛生な口内環境」や「炎症」は、口腔がんに関係していると考えられており、注意が必要です。

治療していない虫歯があり、口腔内が細菌で汚染されていると「口腔がん」の発症リスクが高まるとされています。

(参考:国立研究開発法人 国立がん研究センター『口腔がんの原因・症状について』)

まとめ

虫歯は自然に治ることはなく、放置すれば悪化して、歯を失ってしまうこともある病気です。

しかし、患者さんが自分で「もう手遅れかも」「今さら治療しても遅い」と思い込んでいても、治療次第では歯を残せる可能性はあります。

歯を失って後悔しないためにも、自己判断で治療を諦めてしまう前に、歯科医院で相談しましょう。

お花茶屋ハル歯科・矯正歯科では、歯を削る際の音や痛み、治療環境の不安など、患者さんの痛みやストレスに配慮した治療を行っています。

長年虫歯を放置してしまった方でも、気づいた今この瞬間から治療は可能です。

「虫歯治療が怖い」「歯科治療が苦手」といった場合は、まずは検診やクリーニングだけを受け、その時に虫歯治療について相談することもできますので、まずはお気軽にご相談ください。