
「夜になると歯がズキズキして眠れない」「痛み止めを飲んでも効かない」というお悩みを抱えていませんか?
歯の痛みは放置すると悪化しやすく、夜間には血流や神経の働きの影響で強く感じることがあります。いくつかの応急処置により痛みが軽減されることがありますが、症状によっては歯科医院での診察が推奨されます。
この記事では、歯が痛くて寝れないのに薬が効かない場合の応急処置や、歯の痛みの原因、歯が痛いときに避けるべき行動などを詳しく解説します。
歯が痛いときには歯科医院の受診が最優先

歯の痛みの根本的な原因を解決するには、歯科医院での専門的な診断と治療が不可欠です。
しかし、歯科医院にすぐに駆け込めないときもあるため、自身でできる応急処置を知っておくことも大切です。
例えば、市販薬の服用や患部の冷却、ツボ押しなどの対処法があります。ただし、あくまで歯科医院に行けない間に痛みをしのぐ方法だと認識しておきましょう。
応急処置で痛みがやわらいでも、根本的に問題が解決したわけではありません。歯の痛みの原因には、虫歯だけでなく歯周病、親知らず、歯の破折、副鼻腔炎や心臓疾患など多岐にわたる可能性があります。
放置すると悪化する恐れがあるため、早めに歯科医師へ相談することが望ましいです。
歯が痛くて寝れない・薬が効かない主な原因

歯の痛みが薬で抑えられない場合や、夜間に特に強くなる場合、虫歯の進行や親知らずの炎症など、さまざまな原因が考えられます。
ここでは、歯と直接関連する痛みの原因を詳しく解説します。
虫歯の進行(歯髄炎)
虫歯が神経まで達すると歯髄炎と呼ばれる強い炎症が起こり、鎮痛薬が効きにくいことがあります。
歯髄炎の場合、横になると血流が増え、副交感神経が優位になる夜間は特に痛みを感じやすくなる傾向があります。放置すると症状が悪化するため、早めに歯科での診察が必要です。
また、歯髄炎は不可逆性に進行することが多く、根管治療が選択される場合があります。
歯の根に膿が溜まる「根尖性歯周炎」
神経が死んだ歯の根の先に膿が溜まると、根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)と呼ばれる状態になり、強い痛みが続く場合があります。
炎症が広がると顎の骨や周囲の神経に影響し、痛みが再発することもあるため、違和感や腫れを伴うときは早期の受診が重要です。
根尖性歯周炎の治療では、根管治療や外科的処置で感染源を除去することが一般的です。
歯ぎしり・食いしばりによる「咬合性外傷」
ストレスなどが原因で寝ている間に歯ぎしりや食いしばりを行うと、歯や歯周組織に過度な負担がかかり、咬合性外傷を起こすことがあります。
これにより炎症や痛みが生じ、夜間の血流増加でさらに強く感じることがあります。
咬合性外傷の場合、長期的に歯の破折や歯周病の進行リスクを高める可能性があるため、歯科医院での相談と計画的な治療が必要です。
夜間の血流変化と副交感神経の影響
身体を横にすると頭部への血流が増加し、炎症部位の神経の圧迫により夜間に歯の痛みが強まることがあります。
また、副交感神経が活発になることで感覚が敏感になり、日中よりも歯の痛みを強く感じる場合があります。
炎症が存在する場合、わずかな循環変化でも疼痛が誘発されやすいです。
親知らずが原因の炎症「智歯周囲炎」
親知らずは生える位置や角度によって清掃が難しく、細菌が溜まりやすい部位です。
その結果、周囲の歯ぐきに炎症が起こる智歯周囲炎(ちししゅういえん)が生じることがあります。智歯周囲炎では、強い痛みのほか、腫れや口の開けづらさを伴う場合もあります。
感染が原因のため、痛み止めが効きにくい場合があり、膿瘍形成に進行すると抗菌薬や切開排膿が必要になることもあります。早期治療が望ましいです。
歯のひび割れによる痛み「歯の破折(クラック)」
歯に小さな亀裂が入り、神経まで達すると細菌感染を起こし炎症や強い痛みにつながることがあります。
こうしたクラックによる痛みは、通常の鎮痛薬では改善しにくい傾向があります。
クラックを放置すると症状が悪化するため、違和感が続く場合は歯科医院での精査が必要です。診断にはマイクロスコープやCT画像が用いられることもあります。
冷たいものにしみる「知覚過敏」
歯ぎしりや加齢による歯ぐきの後退で象牙質が露出すると、冷たいものや熱いものにしみる知覚過敏が起こります。
知覚過敏は、象牙細管の開口が刺激を神経に伝えることが主な要因とされています。
虫歯のような感染性の痛みではなく、一時的に治まることもありますが、原因を除去しないと繰り返すため歯科医院で状態を確認しましょう。
歯科矯正と関連する歯の痛み
矯正治療中には、歯の移動に伴う一時的な痛みや圧迫感が生じます。
この痛みは、通常予測されるものです。しかし、治療に伴う噛み合わせの変化により歯や顎関節に過度な負担がかかり、咬合性外傷と同様の痛みが生じる可能性があります。
また、新しい矯正装置への不慣れや治療過程における精神的なストレスが、歯ぎしりや食いしばりを誘発し、歯周組織の炎症や鎮痛剤が効きにくい歯痛につながるケースも報告されています。
歯に原因がない非歯原性歯痛の可能性

歯科医院でレントゲンや検査を受けても、虫歯や歯周病など歯自体に明らかな異常が見当たらないのに痛みが続く場合、「非歯原性歯痛」と呼ばれる種類の痛みが考えられます。
ここからは、歯に原因がない非歯原性歯痛の症状を解説します。
副鼻腔炎(蓄膿症)
鼻の奥にある空洞に炎症が起こる副鼻腔炎(蓄膿症)は、歯の痛みの原因となることがあります。
炎症が悪化すると、何もしなくても歯が痛んだり、複数の歯が同時に痛んだりする特徴があります。また、頭を下げると副鼻腔内の圧力変化により痛みが強まることもあります。
鼻づまりや頭痛を伴う場合は、歯の痛みが副鼻腔炎による可能性が高く、耳鼻咽喉科での専門的な診断と治療が必要です。
顔面神経の痛み(三叉神経痛)
顔の感覚を脳に伝える三叉神経に血管などが接触し、電気が走るような瞬間的で激烈な痛みが顔面や歯に生じるのが三叉神経痛です。
三叉神経痛は、食事、歯磨き、髭剃り、化粧、洗顔などが痛みのきっかけとなります。歯には異常が見られないため、歯科医院を受診しても「原因不明」と診断されるケースが非常に多いです。
三叉神経痛の症状が疑われる場合は、脳神経外科での診察が必要です。
ストレスや心因性が引き起こす歯痛
ストレスや身体にさまざまな影響を及ぼし、歯の痛みもその一つです。
ストレスが蓄積すると、自律神経のバランスが乱れて免疫力が低下し、口内の細菌が増殖しやすくなります。
これにより、歯茎の腫れや炎症、さらには虫歯や歯周病の進行を招くことがあります。また、ストレスは唾液の分泌量も減少させるため、口内環境が悪化しやすいです。
ストレス性の歯痛は、市販の鎮痛薬では効果が得にくい、夕方に痛みが増すといった特徴がみられる場合があります。
歯科医院で「原因不明」や「非定型歯痛」と診断されることもあり、うつ病や不安症など心身の状態が関与するケースもあります。
強い痛みや不安が続くときは、歯科とあわせて心療内科や精神科への相談も検討するとよいでしょう。
頭痛・肩こりからの関連痛
関連痛とは、痛みが生じている部位とは別の離れた場所で痛みが感じられる現象です。
慢性的な頭痛や肩こりは、首や肩、顎周りの筋肉の緊張や血行不良を引き起こします。その結果、顎周辺や顔の筋肉に影響を与え、歯に痛みを引き起こすことがあります。
特にパソコン作業やスマートフォンの長時間使用など、同じ姿勢を続ける習慣は筋肉を硬直させやすいため注意が必要です。
歯自体に問題がなくても痛みが出る場合があるため、必要に応じて整形外科や頭痛外来などで診察を受けることが望ましいでしょう。
心臓疾患による関連痛
狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患が原因で歯の痛みが現れることがあります。
これらは心原性歯痛と呼ばれ、多くの場合、胸の痛みと同時に歯や下顎に圧迫感や焼けるような痛み(灼熱痛)が生じます。また、運動によって痛みが悪化し、安静にすると軽減するのが特徴です。
稀に歯の痛みが唯一の症状である場合もあり、心臓の病気は命に関わる緊急性の高い状態となることがあるため、これらの症状がある場合は直ちに循環器内科を受診しましょう。
歯が痛くて寝れない・薬が効かないときの応急処置

歯が痛くなって眠れないとき、まずは患部の状態に応じて適切な対処を取りましょう。
薬が効かない激しい歯の痛みは、一時的でも和らげることが重要です。
ここでは、歯科医院を受診するまでの間に試せる応急処置の例を紹介します。
市販の痛み止めを服用する
歯の痛みを一時的に和らげるには、市販の鎮痛剤が有効な場合があります。
主な成分としては、ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどがあります。
成分名 | 特徴・メリット |
---|---|
ロキソプロフェン | ・一般的に歯痛や炎症をともなう痛みに対して用いられることがある ・薬効のあらわれ方が比較的速いとされる |
イブプロフェン | ・炎症に関連する痛みや発熱時の使用例が多い ・小児用製剤としても広く市販されている |
アセトアミノフェン | ・胃腸障害が比較的少ないとされる ・小児から高齢者まで幅広い年齢層で使用されることがある ・妊娠中の使用についても医師の判断のもと処方される例がある |
これらの鎮痛剤を服用する際は、必ず製品に記載されている用法・用量を厳守し、過剰摂取は避けましょう。過剰な摂取は副作用や健康被害のリスクを高めます。また、アルコールとの併用は副作用を引き起こす可能性があるため、確実に避けてください。
市販薬を服用しても痛みが続く場合は、自己判断で薬を増やさずに歯科医師に相談することが重要です。
患部を冷やす
歯の痛みを和らげる応急処置として、患部を外側から冷やす方法があります。
冷たいタオルや氷嚢を頬に当てると血管が収縮し、炎症による痛みがやわらぐ可能性があります。ただし、長時間は避け、「10分冷却→10分休憩」を繰り返すのが望ましいです。
歯を直接氷で冷やすのは刺激が強いため避けてください。また、歯周病や知覚過敏の痛みには不向きなため、虫歯による痛みに限定して行うようにしましょう。
ツボを押す
歯の痛みを和らげる応急処置として、以下の部位のツボ押しが補助的に用いられることがあります。
- 手の甲にある合谷(ごうこく)」
- 手のひらの歯痛点(しつうてん)
- 下唇と顎の間にある承漿(しょうしょう)
- エラ付近の頬車(きょうしゃ)
- 耳の前にある下関(げかん)など
これらのツボは、いずれもやや強めに押すと血行促進や神経の鎮静化が期待され、リラックスにもつながります。
ただし、ツボ押しは一時的な痛みの軽減を目的とした補助的手段です。根本的な原因を治すものではありません。
うがいや歯磨きで口腔内を清潔に保つ
歯の痛みがあるときは、口腔内を清潔に保つことが大切です。
ぬるま湯でのうがいは食べかすや細菌を洗い流し、痛みの悪化を防ぐ助けになります。ただし、熱湯や冷水は刺激になるため避けましょう。
口腔内を清掃する場合は、柔らかい歯ブラシで優しく磨き、フロスや歯間ブラシで細部の汚れも除去します。さらに塩水うがいや殺菌作用のあるマウスウォッシュも補助的に役立つとされます。
清潔な口腔環境は痛みの軽減だけでなく、炎症や感染予防にもつながるため、日常的に心がけることが重要です。
頭を高くして寝る
歯の痛みは夜間に強くなることがあり、その一因は横になると頭部に血流が集まり炎症が悪化するためです。
副交感神経が優位になることで感覚が敏感になり、痛みを感じやすくなることもあります。
これらが原因で歯が痛む場合、枕を2つ重ねて頭を高くして寝ることで血流の集中を防ぎ、症状の緩和が期待できます。
横向きではなく仰向けで寝ることを意識すると、痛みの悪化を防ぎやすくなります。
歯科医院の救急外来を受診する
症状によっては、歯科医院の救急外来の受診が推奨されます。
例えば、以下の症状は感染症の可能性があるため、速やかに歯科医院に相談しましょう。
- 顔の腫れや高熱を伴う場合
- 痛みの原因が不明な場合
市販薬も効かない歯痛では、非歯原性歯痛や重篤な病気が隠れている可能性があるため注意が必要です。
歯の痛みを放置すると、虫歯の進行や顎の骨への影響、さらには全身疾患のリスクを高める可能性もあります。
応急処置や時間経過で痛みが和らいだとしても、必ず歯科医院で適切な診断と治療を受けましょう。
歯が痛くて寝れないときに避けるべきNG行動

強い歯痛があるとき、誤った対処をすると痛みが悪化することがあります。
以下の行動はできるだけ避けましょう。
- 虫歯を放置する
- 腫れや膿を無視して放置する
- 親知らずの炎症を放置する
- 就寝中の歯ぎしり・食いしばりをそのままにする
- 歯のひび割れを放置する
- アルコールと鎮痛剤を併用する
- 痛みがあるときに喫煙する
- 横向きや低い枕で寝る
- 冷たい飲食物を摂り続ける
- 熱い飲み物や長時間の入浴で患部を温める
- 矯正治療中に痛みを我慢し続ける
歯の痛みで眠れないときは、自己判断で無理に我慢したり間違った行動を取ると症状が悪化する恐れがあります。
応急的に痛みを和らげる工夫をしつつも、根本的な解決には歯科での早期診察が欠かせません。
まとめ
歯の痛みで寝れないときは、市販薬で痛みを抑える、患部を冷やす、頭を高くして寝るなど、さまざまな対処法があります。
しかし、自己判断で我慢したり誤った対処をしたりすると、かえって症状を悪化させる恐れがあります。
歯の痛みの根本的な原因解決には、歯科医院での早期診察が欠かせません。
一般歯科から小児矯正・成人矯正まで幅広く対応しているお花茶屋ハル歯科・矯正歯科では、患者さま一人ひとりに寄り添った丁寧な診療を行っています。
原因不明の歯の痛みに悩まされている方、応急処置で歯の痛みが軽減されない方は、お気軽に当院までご相談ください。