
お子さまの歯の矯正を始めるにあたって、「第一期治療のみでやめてもいいのか」気になる保護者の方も多いでしょう。
小児矯正の第一期治療は、成長期を利用して顎の発育を整える重要なものです。第一期治療で歯並びや顎の骨格に何らかの問題があった場合、第二期治療へ移行することが推奨されます。
この記事では、第一期治療の役割や注意点をわかりやすく解説し、治療終了の判断に必要な知識をお届けします。
小児矯正の第一期治療とは

小児矯正は、成長段階に合わせて二つのステップで行われます。
第一期治療は、お子さまの顎の成長バランスを整え、これから生えてくる永久歯が正しい位置に並ぶための土台を作る工程です。
続く第二期治療では、永久歯が生えそろった後に、噛み合わせや歯列の細部を整えます。
「第一期治療だけで終わらせたい」と考えるお気持ちは自然ですが、顎や歯の成長は一人ひとり異なるため、適切な判断には専門的な診断が欠かせません。
まずは第一期治療がどのような役割を担っているのかを理解することが、将来の歯並びの質を大きく左右します。
第一期治療と第二期治療の違い
第一期治療は、乳歯と永久歯が混ざっている「混合歯列期」(おおむね6〜12歳頃)に行われます。
この時期は顎の骨が柔らかく、成長の方向をコントロールしやすいため、永久歯がきれいに並ぶための十分なスペースを確保することが主な目的です。
一方、第二期治療はすべての歯が永久歯に生え替わった後(およそ12〜13歳以降)に実施されます。この段階では、噛み合わせを完成形に近づけ、1本ずつの歯の位置を細かく整える作業が中心となります。
両者は目的もタイミングも異なるため、段階的に行うことで長期的な安定を得やすくなります。
第一期治療の内容
第一期治療では、お子さまの顎の発育を理想的な方向へ導き、将来の歯並びに必要なスペースをつくるための装置を使用します。
代表的な矯正装置には以下があげられます。
- 拡大床:取り外し可能で歯列を少しずつ広げる
- 急速拡大装置:短期間で顎の幅を広げる
- マウスピース型矯正装置(プレオルソ、インビザライン・ファーストなど):悪習癖の改善や顎の成長促進に使用
- 顎外固定装置(ヘッドギア、チンキャップなど):骨格の不正を改善する
お子さまの成長パターンや症例に応じて、これらを組み合わせて治療計画が立てられます。
小児矯正は第一期治療のみでやめていいのか?

「第一期治療でやめる」判断は、症例の成長予測と現在の噛み合わせの安定度を総合して決まります。
ここでは、第二期治療が不要と判断される条件や、第一期治療で完結しやすい症例や途中終了の現実的な事情を解説します。
歯科医師が「第二期治療は不要」と判断するケース
第一期治療で完結できるのは、骨格や歯が生えてくる道筋に大きな問題がなく、第一期治療の目的である「顎の成長誘導」と「スペース確保」が達成できたときです。
生え替わりが順調で永久歯が自然に整列し、咬合の安定が見込める場合、歯科医師が「第二期治療は不要」と判断することがあります。
最終判断では、横顔のバランスや成長予測モデルも活用し、長期的に安定するかどうかが検証されます。
第一期治療のみで終了する可能性が高い歯並び
現状の歯並びによっては、第一期治療のみできれいに整うと判断されるケースもあります
例えば、以下のような条件では第一期治療のみで終了する可能性が高いです。
- 歯が小さく前歯のスペース不足が軽度な症例
- 上顎中切歯のみの突出
- 骨格的問題が乏しい軽い受け口など
ただし、第一期治療は完成ではなく、あくまで中間到達点とされます。仕上がりはおおむね7割程度と捉え、理想形を目指すなら第二期治療も行うのが基本です。
特に側方歯群の噛み合わせや上下顎の成長バランスは、第一期治療後も経過観察が必要です。
保護者の意向による途中終了
保護者の意向により、第一期治療のみで終了となるケースも一定割合あります。
その理由として、転居や通院の負担、費用面の事情、お子さまのモチベーション低下などがあげられ、「気になる箇所が十分改善された」と保護者が判断する場合もあります。
第一期治療の終了は、医師の説明と保護者の価値観を擦り合わせて最終決定することが基本です。
途中終了を選ぶ場合でも、定期的な成長チェックと噛み合わせのモニタリングは欠かせません。
第一期治療のみでやめるリスクと注意点

小児歯科を第一期治療のみでやめた場合、お子さまの歯の将来に悪影響が出る場合があります。
具体的にどのような影響があるのか、歯列・咬合・顎関節・口腔衛生・将来的な治療という観点で見ていきましょう。
理想的な歯並びになりにくい
第一期治療だけでは、見た目と噛み合わせの両方を高い水準で仕上げにくいと考えてください。
なぜなら、第一期治療は顎の成長を整えスペースを作る段階であり、細かな位置決めは第二期の役割だからです。
たとえ前歯が整って見えても、犬歯〜小臼歯の角度や奥歯の高さがわずかにズレて噛む効率が落ちることがあります。そのようなリスクを避けるため、横顔の分析レントゲンで予測することも可能です。
小児矯正の完成度を高めたい場合は、第二期まで見据えた長期的な計画を立てることが重要です。
後戻りする可能性がある
第一期治療のみで終えると、整えた歯が成長や癖の影響で元に寄りやすくなります。
これは、口呼吸や舌で前歯を押す癖、頬杖などが残ると歯が動きやすく、保定装置(リテーナー)の継続が欠かせないからです。
夜間の装着を中断すると数週間でも歯は動くことがあり、舌の位置と鼻呼吸を整える口腔筋トレ(MFT)や3〜6ヶ月ごとの定期チェックが安定に役立ちます。
リテーナー継続と癖の是正を徹底することで、後戻りの確率を下げられます。
噛み合わせや顎関節への負担
噛み合わせが未完成のままだと、顎関節や咀嚼筋に負担がかかりやすくなります。
片側噛みや食いしばりが増えると筋肉がこわばり、関節にストレスが集中します。口の開閉で「カクッ」と音がする、朝に顎がだるく感じる、口が開けにくいといったサインが続く場合は注意が必要です。
第二期治療で犬歯のガイドや奥歯の接触を整え、必要に応じてナイトガードを併用すると顎にかかる負担を軽減できます。
虫歯や歯ぐき病のリスク増加
歯列の乱れが残ると、虫歯や歯ぐきの炎症リスクが上がります。
これは、歯の重なりやねじれで磨き残しが増え、プラーク(歯垢)が停滞しやすくなるからです。
虫歯や歯ぐき病の予防効果を高めたい場合、電動ブラシとフロス、フッ素入りペースト、3〜4ヶ月ごとのクリーニングを組み合わせることが推奨されます。
さらに、第二期治療で歯列を整えると清掃性が上がり、同じケア時間でも結果が出やすくなります。
将来的な抜歯や外科矯正の必要性
成長期に適切な対処をしないと、将来に抜歯や外科手術の必要性が高まる可能性があります。
なぜなら、成人は骨が動きにくいため治療が長期化しやすく、費用負担も増えるからです。
上顎や下顎の前後差が大きい場合や開咬傾向が強い場合、歯科用CTで根の位置や骨の厚みを確認しながら治療を計画します。
第一期治療から段階的に介入することで、抜歯や手術なしで治療できる可能性があります。
一度中断した治療は再開できない

小児矯正を途中でやめて時間が空くと、歯の生え替わりや顎の成長が進み、口腔内の条件が大きく変わります。
再治療では、セファロ分析(横顔の骨格を評価する頭部X線)や口腔内スキャン、パノラマX線、歯科用CTなどを行い、治療計画をゼロから組み立て直します。
そのため、装置の作り直しや診断費用、治療期間の延長が生じることも多く、小児矯正を第一期のみでやめる判断は慎重に行いましょう。
後戻りや噛み合わせの不均衡が進む前に、継続か第二期移行の可否を担当医と早めに相談してください。
第二期治療への移行が推奨されるケース

第一期治療で土台をつくった後、第二期治療では仕上げに取り掛かります。
ここでは、どのようなケースで第二期治療への移行が推奨されるのか詳しく解説します。
歯並びや顎の骨格に問題が残る場合
第一期治療を終えたときに骨格や歯列の不均衡が残っている場合、第二期治療へ移行します。
上顎前突・下顎前突、開咬や過蓋咬合、左右のズレがあると、成長とともに咀嚼効率の低下や片側噛み、顎関節への負担が高まります。
第二期では、マルチブラケットやマウスピースで1本単位の位置・角度・傾きまで精密に調整し、犬歯誘導と大臼歯関係を整えます。
仕上げの保定で後戻りを抑え、長期安定を目指していきます。
お子さま自身の心理的なコンプレックスへの配慮
お子さまが歯並びの見た目に悩んでいたり、口元へのコンプレックスが続いていたりする場合、第二期治療でしっかりと整える価値があります。
思春期は対人関係が広がる時期であり、前歯の突出や叢生、正中のズレがあると笑顔や発音への自信を損ないかねません。
第二期治療で口元の調和を高めると、自然に笑いやすくなり、コミュニケーションの不安が軽減されることもあります。また、機能面の改善も同時に進み、食事や会話の快適さが向上します。
口腔機能の改善と全身の健康維持
第二期治療後に咀嚼・嚥下・発音・呼吸に課題が残った場合、第二期治療へ移行して噛み合わせを最適化します。
第二期治療では、上下の接触関係と犬歯ガイドを整えることで筋負担を減少させ、歯周の炎症やう蝕リスクも抑制します。
形態と機能の双方を安定させるために大事なのが、口腔筋トレです。舌位と鼻呼吸を定着させて保定を組み合わせると、外傷の予防やスポーツ時のパフォーマンス向上にも有効です、
小児矯正に対する保護者のサポートと心構え

小児矯正で理想的な歯並びを手に入れるためには、ご家族のサポートが欠かせません。
ここでは、保護者の方に必要な心構えや基礎知識をわかりやすく紹介します。
親が治療を決断し、継続をやさしく見守る
お子さまが小児矯正を継続できるかどうかは、ご家庭の後押しで大きく変わります。
例えば、矯正装置を装着する時間や通院日は、学校や習い事と同じカレンダーに入れて家族で共有しましょう。
「矯正装置が痛い」「壊れた」「装着し忘れた」というときは、早めに医院へ連絡すると安心できます。
矯正を頑張って続けているお子さまに対しては、「よくできたね」「昨日より上手だね」と声をかけると自信が育ちます。
家族の方針をぶらさず、前向きな言葉でやさしく支え続けることが、第二期治療まで無理なく小児矯正を継続する秘訣です。
お子さまのやる気を育むサポート体制
矯正装置の装着時間や口腔筋トレはアプリやチェック表で見える化し、きちんとできた日はシールを貼ったり、やさしい言葉で褒めたりすることが大切です。
もしも痛みが出たときは、お子さまから「どのタイミングで発生したのか」を聞き、次回の受診で担当医と共有すると対策を立てやすくなります。
担当医と定期的に「できたこと」を振り返ると、お子さまの成功体験が重なり、治療を前向きに続けられるようになります。
悪癖の改善と食生活の見直し
日々の生活で小さな習慣を整えることが、後戻りを防ぐ近道になります。
例えば、口呼吸や舌で前歯を押す癖、頬杖、指しゃぶり、片側だけで噛む習慣は、歯並びを乱しやすくなる原因となります。そこで、口腔筋トレで鼻呼吸と正しい舌の位置を練習し、寝る姿勢や枕の高さも見直すことが大事です。
食事は噛み応えのある食材を少しずつ増やし、前歯でかぶりつく機会をつくりましょう。飲み物は水や無糖のお茶を基本にして、毎日のフロスとフッ素で虫歯を予防することがおすすめです。
まとめ
小児矯正を第一期治療のみでやめると、理想的な歯並びにならない場合があり、後戻りするリスクもあります。
第一期治療はお子さまの顎の成長を促し、将来の歯並びの土台を築く非常に重要なステップです。
すべてのお子さまが第一期治療のみで矯正を完了できるわけではありませんが、適切な時期に治療を開始することをぜひ検討してみてください。
お花茶屋ハル歯科・矯正歯科では、矯正歯科専門医が成長予測とセファロ分析に基づき、第一期から第二期まで一貫した治療計画をご提案しております。
お子さまが不安を感じない矯正治療を提供するため、カウンセリングの段階から丁寧でやさしい対応を心がけておりますので、ぜひこの機会にご来院ください。