
矯正歯科で歯列矯正を行う場合、一般的に知られているワイヤー矯正がいいのか、近年話題のマウスピース矯正がいいのか迷う方は少なくありません。
また、大人と違って子どもの歯列矯正はより慎重に選ぶ必要があると考える親御さんも多いです。
この記事では、矯正歯科で行う歯列矯正の種類を大人と子どもに分けて紹介します。
それぞれの選び方のポイントも紹介するため、歯列矯正でお悩みの方はぜひご覧ください。
歯列矯正とは

歯列矯正は、見た目や機能を改善するために行われる歯科治療です。
まずは、歯列矯正について詳しく紹介します。
歯列矯正を行う目的
歯列矯正は、歯や顎の位置を調整して嚙み合わせや歯並びを整える歯科治療の1つです。
見た目の改善だけではなく、噛む、話すなどの機能面の改善を目的として行われる場合もあります。
治療は保険適用になる症例と自由診療の症例がありますが、多くの場合は自由診療です。
目的は、嚙み合わせの改善、虫歯や歯周病のリスク低減、口元の印象を変えるなど、患者さんによって異なります。
いずれの場合も、実際の治療方針や必要性は歯科医師によって診断される点が特徴です。
歯列矯正のメリット
歯列矯正には、以下のようなメリットがあります。
- 歯並びや嚙み合わせの改善が期待できる
- ブラッシングしやすくなる場合がある
- 見た目の変化による心理的効果が得られることがある
噛み合わせが改善すると、肩こりや頭痛なども副次的に改善されることがあり、全身の健康にも影響を与える可能性があります。
また、以前は見た目の向上が重視されていましたが、最近では清掃面が行き届くことで虫歯や歯周病のリスクが低減できるといわれています。
見た目のコンプレックスが解消される方もいるため、特に集団行動の多い子どものうちから歯列矯正を検討する親御さんも多いです。
歯列矯正のデメリット
歯列矯正には、以下のようなデメリットがあります。
- 治療期間が長期的になる
- 自由診療だと費用負担が大きい
- 調整後の痛みや違和感
- 食事、歯磨きの工夫が必要
治療期間は一般的に1~3年程度かかるため、長期間の治療がストレスになる方もいます。自由診療であることが多く、費用は数十万~100万円以上かかることもある点は留意点として挙げられます。
また、約1カ月ごとに調整が必要になるため、器具の調整後は痛みや違和感に悩まされる方も少なくありません。
矯正器具を装着中は、一時的に食事や歯磨きが不便になるため、工夫が必要です。
矯正歯科で行う歯列矯正の種類

いざ歯列矯正をしようと思っても、いくつかの種類のなかからどの治療が自分に向いているかわからない方も少なくありません。
ここからは、歯列矯正の種類を紹介します。
表側矯正
表側矯正は、歯の表面にブラケットを直接固定してワイヤーを通して動かす方法です。幅広い症例に対応可能で、歴史が長く実績もある治療方法です。
抜歯が必要な重度の歯並びの乱れにも対応でき、取り外しができないため自己管理の必要がありません。
ただし、金属の矯正器具は笑ったときに目立つことを懸念する方もいます。また、調整時に痛みが出やすく、口内炎にもなりやすいため、痛みに弱い方は注意が必要です。
裏側矯正
裏側矯正は、歯の裏側にブラケットを直接固定してワイヤーを通す方法です。裏側に取り付けるため、「舌側矯正」や「リンガル(舌の)矯正」と呼ばれることもあります。
表側矯正に比べて目立ちにくいため、矯正器具が見えることが気になる方に向いています。
ただし、裏側に装置があるため舌が当たりやすく、口内炎のリスクや発音への影響が懸念されます。
また、裏側の装置は表から見づらいため、ブラッシングに工夫が必要です。
ハーフリンガル矯正
ハーフリンガル矯正は、表側矯正と裏側矯正を組み合わせた方法です。上あごの歯は裏側、下あごの歯は表側に矯正器具を装着するのが一般的です。
上あごの表側矯正は目立ちやすいですが、その部分を裏側にすることで目立ちにくく、裏側矯正よりも費用を抑えた治療が可能なケースがあります。
ただし、対応しているクリニックが少ないことや、裏側矯正と同様にブラッシングの工夫が必要になることが注意点です。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の矯正器具を治療段階に合わせていくつか装着していくことで、歯を動かす方法です。
透明なマウスピースなので目立ちにくく、痛みも感じにくいことや、取り外して清潔を保てる点がメリットとして挙げられます。
ただし、1日20時間程度の装着が必要になるため自己管理が必要です。紛失や破損のリスクもあるため、ワイヤー矯正と比べると管理面での負担が増えます。
子どもの歯列矯正とは

子どもの歯列矯正も、大人と同様にワイヤー矯正、マウスピース矯正がありますが、子どもの場合は成長段階に合わせて大人とは異なる装置を使用する場合もあります。
ここからは、子どもの歯列矯正について紹介します。
1期治療
子どもの歯列矯正には、1期治療と2期治療があります。1期治療は永久歯が生えそろう前の6~12歳頃に行われるのが一般的です。
主な目的として、顎の骨の成長を促して歯が並ぶスペースを確保したり、指しゃぶりや口呼吸などの癖を改善したりする点が特徴です。
1期治療を適切に行うと、2期治療が不要になるケースや抜歯のリスクを軽減できる場合もあります。
2期治療
2期治療は、13歳以降に行う歯列矯正で基本的に大人の治療と同じ内容です。
永久歯が生えそろってから行われる歯列矯正を指し、ワイヤー矯正やマウスピース矯正によって歯列を整えます。
矯正歯科で行う子どもの1期矯正の種類

1期治療で用いられる矯正器具は、大人の矯正治療とは違って顎の成長を促すものが一般的です。
ここからは、子どもの歯列矯正に使われる矯正器具の種類を紹介します。
拡大床(かくだいしょう)
拡大床は、小さい顎を広げて歯が並ぶスペースを確保するために用いられる矯正器具です。
プレートを少しずつ拡大して使用します。
食事中や歯磨きの際は外すことができるため清潔を保てる点が特徴です。
叢生(そうせい)による凹凸がある歯並びに有効です。成長期に使用することで歯列を外側に広げられます。
ただし、着脱可能なため子どもが嫌がったときに親御さんが装着を管理する必要があり、矯正治療の必要性をしっかりと親子で話し合う必要があります。
プレオルソ
プレオルソは、マウスピース型の装置です。顎の発育を促し口周りの筋肉や舌の位置を改善する目的で使用される矯正器具です。
3~10歳くらいの子どもが対象です。歯並びが悪くなる原因を根本的に治療する点から、後戻りしにくい特徴があります。
2期治療が不要になるケースもあり、治療期間や費用を抑えられる可能性もあります。
シリコン製で柔らかいため、痛みも少なくお子さんに負担をかけにくい点も特徴です。
自分に合った歯列矯正の種類を選ぶポイント

自分に合った歯列矯正の種類を選ぶためには、いくつかのポイントを比較する必要があります。
ここからは、自分に合った歯列矯正の種類を選ぶポイントを紹介します。
予算
歯列矯正は高額な費用がかかるため、どの程度の費用がかかるか事前に確認し、予算に合わせて種類を選ぶ必要があります。
例えば、大人の歯列矯正では以下のような相場が一般的です。
種類 | 全体矯正 | 部分矯正 |
---|---|---|
表側矯正 | 60~130万円程度 | 30~60万円程度 |
裏側矯正 | 100~170万円程度 | 40~70万円程度 |
マウスピース矯正 | 60~100万円程度 | 10~40万円程度 |
費用を重視する方は、マウスピース矯正が予算内に収まる可能性があります。また、部分矯正か、全体矯正かによっても費用は変わってきます。
歯科医師と相談のうえ、費用を抑えたい希望がある方は検討してみてください。
対応可能な歯並び
表側矯正や裏側矯正などのワイヤー矯正は、重度の不正咬合にも対応可能な場合が多いですが、マウスピース矯正は対応できる歯並びに限界があります。
マウスピース矯正を希望しても、歯科医師の判断で対応不可とされる場合があり、症例ごとに適応は異なります。
ご自身の希望と適応症例について、歯科医師に相談して確認したうえで、ほかのポイントとともに判断しましょう。
矯正期間
歯列矯正はゆっくりと弱い力で歯を動かしていきますが、矯正器具によって多少期間が異なります。
表側矯正は2年程度、裏側矯正は3年程度、マウスピース矯正は1~2年程度が一般的です。
ただし、もちろん症例によって治療期間の違いはあるため、初回のカウンセリングで確認が必要です。
ワイヤー矯正で大きく歯を動かす治療になればなるほど、期間が長くかかる傾向にあります。
また、歯列矯正は終了後に保定期間があり、矯正期間と同じくらいの期間が後戻り防止として必要です。
トータルでどの程度の期間がかかるかしっかりと確認しておきましょう。
抜歯の有無
歯列矯正では、歯を動かすスペースを確保するために抜歯を行う場合があります。
特に、歯を大きく動かすワイヤー矯正では抜歯の可能性が高まり、マウスピース矯正は少ない移動を目的とするため抜歯を行わないケースがあります。
ただし、抜歯をする・しないは矯正終了後の歯並びが整うことを考えると、こだわるポイントとは捉えない方も多いです。
非抜歯にこだわりすぎるのではなく、歯科医師とよく仕上がりについて確認することが重要です。
通院頻度
歯列矯正の種類によって、どの程度通院するかが異なります。
ワイヤー矯正は、ワイヤーの調整をするために月に1回程度通院する必要があり、対してマウスピース矯正は、1~3カ月に1回の通院です。
どの程度通院できるかは患者さんごとに異なるうえに、通院が面倒になるケースも考えられます。
ご自身の状況を考えたうえで、通院頻度を考えたスケジュールを組みましょう。
見た目
表側矯正は笑ったときに目立ちやすいため、接客業や人前に立つ仕事の方、学校で集団生活を送る方は、かえってコンプレックスになる可能性があります。
ただし、最近は透明なブラケットとワイヤーなどで目立ちにくいワイヤー矯正も増えています。
見た目を重視する方は、最初に歯科医師にその旨を伝え、希望通りの器具を選ぶことが重要です。
取り扱いやすさ
ワイヤー矯正は固定式のため自己管理が不要なメリットがある一方で、食事、ブラッシングが面倒なデメリットがあります。
一方で、マウスピース矯正は着脱できるため食事やブラッシングがしやすいですが、装着時間を守る必要があり自己管理が求められます。
どちらがご自身に合った管理方法なのかを検討し、取り扱いやすさで選ぶようにしましょう。
歯列矯正中の生活の工夫

歯列矯正中は、生活を工夫することで過ごしやすくなるため、どのような点に気を付けるべきか知っておく必要があります。
ここからは、歯列矯正中の生活の工夫を紹介します。
食事制限
歯列矯正中は、装置が破損したり変形したりする事態を防ぐために、硬い食べ物や粘着性の高い食べ物は避ける必要があります。
特に、ナッツ類、氷、硬いパン、キャラメル、ガムなどには注意が必要です。
また、色素の濃いカレー、コーヒー、紅茶などは装置や使用するゴムの着色原因となる場合があります。
歯列矯正中の食事は、なるべくやわらかいもの、細く切ったものなど咀嚼しやすいものを選ぶと安心です。
装置周辺に食べカスが残らないように、食後はすぐ口をゆすぐ習慣も役立ちます。
歯磨きやフロスの使用方法
矯正装置を装着している期間は、歯と装置の間に食べカスやプラーク(歯垢)がたまりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まるとされています。
通常の歯ブラシに加えて、矯正用のV字カットブラシやタフトブラシを使い分けると効果的です。
1日2~3回(食事の都度)のブラッシングと寝る前のフロスを習慣化することで、口腔内の清潔を保ちやすくなります。
口内炎や痛みへの対処法
矯正期間中は、装置やワイヤーが口の粘膜に当たって、口内炎や傷などが生じることがあります。
市販の口腔内ワックスを使用して金属部分を覆うと摩擦を減らせます。
調整直後は痛みや違和感が強く出る場合がありますが、数日で軽減することが多いとされます。
痛みが強すぎる場合は、必要に応じて市販の鎮痛剤を使用することもできますが、症状が強く続く場合は歯科医師に相談しましょう。
まとめ
矯正歯科で行う治療にはいくつか種類があり、それぞれ生活に及ぼす影響が異なります。
ご自身の状況や希望に合わせて、適切な治療を選びましょう。
お花茶屋ハル歯科・矯正歯科では、専門の矯正歯科医師がしっかりとカウンセリングを行い、患者様ごとに合った治療を提案します。
どのような種類があるのかとりあえず知りたい方も、ぜひ一度カウンセリングにお越しください。