マウスピース矯正のデメリットとは?失敗しないために知っておくべき注意点と対策を紹介

マウスピース矯正装置をつける女性

見た目が気にならず、取り外しもできて便利なマウスピース矯正ですが、人気が高まる一方で、「デメリットはないの?」「本当に自分に合うの?」と不安を感じている方も少なくありません。

実は、マウスピース矯正には自己管理の難しさや適応できない症例など、注意すべき点も存在します。

本記事では、マウスピース矯正のデメリットや向いていない人の特徴、メリット、ワイヤー矯正との比較などを紹介します。

マウスピース矯正を検討している方、以前ワイヤー矯正を受けて失敗した経験のある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

マウスピース矯正のデメリットとは?

マウスピース矯正装置

近年、需要がどんどん高まっているマウスピース矯正ですが、自己管理の難しさや症例の制限など、治療を受ける前に理解しておくべきデメリットがいくつかあることをご存じですか?

それらのポイントを知っておくことで、治療の失敗リスクを軽減し、より良い結果が得られる可能性を高められます。

ここでは、マウスピース矯正の具体的なデメリットについて詳しく紹介します。

自己管理が求められる

マウスピース矯正は、1日20時間以上の装着が推奨されています。

食事や歯磨きの際は取り外せるのが大きな特徴ですが、再装着を忘れてしまうと効果が出にくく、治療期間が伸びる可能性があるため注意が必要です。

自己管理が苦手な方は、スマホのリマインダー機能を活用したり、生活習慣に合わせてルーティーン化したりなど、装着忘れを防ぐ工夫をするとよいでしょう。

また、マウスピースを紛失すると、作り直しが必要になります。

自己管理を徹底するのは大変ですが、新しい装置を装着するまでの間は治療を行えなくなるため、外したら決まった場所に置くといった対策を講じることをおすすめします。

虫歯や歯周病になる可能性がある

マウスピースを装着したまま長時間過ごすと、唾液の流れが妨げられて、自浄作用や再石灰化作用が阻害されるため、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。

また、歯磨きをせずにマウスピースを装着すると、食べカスが付着して細菌が繁殖しやすい環境になります。

食後は必ず歯磨きをしてから再装着し、マウスピースも洗浄して清潔を保つと同時に、定期的に歯科医院でクリーニングやチェックを受けることが大切です。

適応しない症例がある

マウスピース矯正は、軽度から中等度の歯列不正や、歯の間隔があいている場合、軽度の回転が見られる場合などに有効な矯正治療の方法です。

症例によっては、マウスピース矯正では十分な効果が得られない可能性があります。

歯の移動量にも制限があるため、歯並びの状態によっては手術を検討する場合もあるでしょう。

マウスピース矯正は、治療前に精密検査を受け、歯科医師による診断で治療が可能かどうかの確認が必要です。

症例によっては、ワイヤー矯正や外科的処置との併用で効果を高められる可能性もあるため、自分に合った方法を医師とよく相談することをおすすめします。

歯を削る場合もある

マウスピース矯正では、歯が動くスペースを確保するために、歯と歯の間をわずかに削る『IPR(歯間削合)』が必要になるケースがあります。

IPRは歯の健康に影響しない範囲で行われますが、事前に歯科医師から説明を受け、納得したうえで治療に臨むことが大切です。

健康な歯を削ることに不安がある場合は、削る量や方法について、複数の歯科医院を受診して説明を受けることも選択肢のひとつだといえるでしょう。

基本的に保険が適用されない

マウスピース矯正は、基本的に保険適用されない歯科治療です。

保険が適用されるのは、病気や怪我の治療のために行われるものに限られるため、見た目の改善を主な目的とする歯列矯正は、保険の対象外となります。

ワイヤー矯正では、顎変形症や先天性の疾患による不正咬合(歯並びや噛み合わせが悪い状態のこと)で外科治療が必要と判断された場合に限り、保険適用になる可能性があります。

しかし、薬事法上の医療機器に該当しないマウスピース矯正は、保険適用外の自費診療です。

費用が高額になることもあるため、相場や分割払い、医療ローンの有無などを事前に確認し、無理のない支払い計画を立てるようにしましょう。

奥歯の噛み合わせに影響する場合がある

マウスピースは非常に薄いプラスチックでできていますが、治療中は長期間歯の表面を覆い、噛み合わせの間に装置が入り込んでいる状態になります。

そのため、治療終了後にマウスピースを外すと、その厚みの分だけ隙間ができて奥歯が噛み合わなくなる可能性もあるでしょう。

治療前のシミュレーションでは、歯並びだけでなく噛み合わせの動きも予測しています。

しかし、食事中や日頃の癖など、顎の動きは個人差が大きく再現が難しいとされていることから、噛み合わせまで考慮できる技量を持つ歯科医師の治療を受けることが大切です。

万が一、奥歯の噛み合わせに違和感が生じた場合は、担当の歯科医師に相談し、必要に応じて調整や補正を行うようにしましょう。

歯根が露出する現象が起こる可能性がある

マウスピース矯正では、歯を支える歯槽骨から歯根が露出する現象が起こることがあります。

これは、歯を動かす際に無理な力がかかり、歯槽骨の範囲を超えて歯が移動してしまうことや、治療計画と実際の歯の動きにズレが生じたことなどが主な原因です。

特にもともと歯茎や骨が薄い前歯部では、歯を動かすことで歯周組織から歯がはみ出しやすく、歯肉退縮が起こりやすくなります。

他にも、マウスピースがあっていない場合や、歯周病を併発した場合なども、歯根が露出するリスクが高まります。

マウスピース矯正が向いていない人の特徴

マウスピース矯正装置を持つ女性

マウスピース矯正は、すべての人に適しているわけではありません。

以下のような傾向がある方は、事前に自分のライフスタイルや性格と照らし合わせ、より効果的な治療法を選択することが大切です。

  • 重度の不正咬合の方
  • 自己管理が苦手な方
  • 歯ぎしりや食いしばりの癖がある方
  • 短期間で確実に歯並びを整えたい方
  • タバコを吸う方 など

顎の骨格に問題がある重度の症例や、忙しくてつい装着を忘れてしまう方、無意識に歯に強い力が加わる歯ぎしりや食いしばりの癖がある方、治療に即効性を求める方、日常的にタバコを吸う方は、効果が出にくかったり治療が長引いたりする可能性があります。

診察を受けなければわからないケースや、できないわけではないけれど向いていないケースもあるため、適切な治療法を選ぶためにも、まずは歯科医院を受診して歯科医師とよく相談してみましょう。

マウスピース矯正にはメリットもたくさん

マウスピース矯正装置を持つ女性

マウスピース矯正を検討する際、不安から欠点や良くない点ばかりに目が向きがちですが、メリットもたくさんあることを忘れてはいけません。

ここでは、マウスピース矯正のメリットを紹介します。

矯正装置が目立ちにくい

マウスピース矯正は、透明なマウスピースを使用するため、装置が目立たず周囲に気づかれにくいのが大きなメリットです。

特に営業職や接客業、学生など、人と話す機会が多く、見た目に配慮したい方に適しています。

笑ったときや会話中でも矯正治療中であることをほとんど意識せずに済むため、ストレスを感じにくく、自然体で過ごしやすいでしょう。

食事や歯磨きが普段通りできる

マウスピースは取り外しできるのがメリットです。食事の際に装置を外せば、好きなものを制限なく食べることができます。

ワイヤー矯正のように歯と装置の間に食べ物が詰まる心配もなく、硬いものや繊維質の多いものを避ける必要もありません。

また、歯磨きも通常通りにできるため、虫歯や歯周病のリスクも抑えやすく、口腔内の健康維持がしやすいのもメリットです。

口腔内の清潔を保ちやすい

マウスピースを取り外せることのメリットは、食事や歯磨きだけではありません。

取り外したマウスピースを洗浄することで、装置と口腔内の両方を清潔に保ちやすく、虫歯や歯周病のリスクを低減できます。

専用の洗浄剤や超音波洗浄機を使用すれば、細菌やタンパク質汚れを効果的に除去することも可能です。

また、口腔内の状態を毎日確認しやすく、異常にすぐ気付けるのもメリットだといえます。

違和感や痛みが生じにくい

マウスピース矯正はワイヤーやブラケットを使用しないため、頬や舌を傷つける心配が少なく、装着時の違和感も最小限で済むのがメリットです。

歯が動く際の圧力も比較的マイルドであり、痛みを感じにくいとされる設計になっています。

従来のワイヤー矯正で痛みがトラウマになった方や、初めて矯正治療に挑戦する方にもやさしい治療法として人気です。

通院回数が比較的少ない

マウスピース矯正は、治療計画に基づいてあらかじめ複数枚のマウスピースを渡され、患者さん自身が自宅で順次交換するため、通院回数が少なくて済みます。

従来のワイヤー矯正とは異なり、ワイヤーやゴムの定期的な調整も不要で、歯科医師による微調整も少ないことも理由のひとつです。

一般的に、マウスピース矯正の通院頻度は、2〜3ヶ月に1回が多いとされています。

オンライン診療や遠隔モニタリングに対応している歯科医院も増えていて、柔軟なスタイルで治療を受けられることから、リモートワークが多い方や地方在住の方、通院時間や交通費を節約したい方に向いているといえるでしょう。

ただし、順調な治療の進行のためには、自己管理や歯科医師の指示通りの装着・交換が必須です。

ワイヤー矯正とはどう違う?メリット・デメリット比較

メリットとデメリットと書かれたブロックと矢印

矯正治療の方法といって、最初に思い浮かぶのがワイヤー矯正だという方も多いことでしょう。

ワイヤー矯正とは、ブラケットという小さな矯正装置にワイヤーを通し、少しずつ歯を動かすことで歯並びを整えていく従来の歯列矯正の方法です。

マウスピース矯正は、ワイヤー矯正の弱点を補った治療方法ですが、どちらにもメリットとデメリットの両方があります。

以下は、マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いを表にまとめたものです。

マウスピース矯正ワイヤー矯正
見た目目立ちにくい装置の素材によっては目立ちやすい
痛み・違和感少なめ比較的多い
食事・歯磨き取り外して普段通りにできる取り外せないため、食事や歯磨きに注意が必要
適応症例軽〜中程度向け幅広い症例に対応
通院頻度少なめ多め

マウスピース矯正とワイヤー矯正はそれぞれに特徴が異なります。

マウスピースは装置が目立ちにくく、取り外し可能で口腔ケアがしやすい反面、自己管理が必要で適応範囲に限りがあります。

ワイヤー矯正は幅広い症例に対応可能ですが、装置が目立つことや清掃が難しいこと、痛みを伴うケースが多いことなどに注意が必要です。

これらのことから、一般的にマウスピース矯正は見た目や快適さを重視したい方、ワイヤー矯正は難しい症例や痛みが苦手な方に向いているといえるでしょう。

自分に合った矯正治療を受けることが大切

人差し指を立てる歯科医療従事者の女性

マウスピース矯正が合っているかどうかは、症例やライフスタイルなどによって異なります。

近年、装置を目立たせずに矯正治療が受けられるとして人気ですが、安易に流行だけで選ばず、歯科医師と十分に相談し、自分に適した治療法を見極めることが大切です。

自分の生活習慣や性格、予算、将来の歯の健康を総合的に見つめることで、後悔のない選択につなげましょう。

また、信頼できる歯科医院を選ぶことも非常に重要です。

カウンセリングが丁寧かどうか、症例実績が豊富か、説明がわかりやすいかなどもチェックし、複数の歯科医院で比較検討するのもおすすめです。

矯正治療は、数ヶ月から数年に及ぶ長期治療となるため、納得のいく治療を受けることが、理想の歯並びや噛み合わせを手に入れる近道となります。

まとめ

マウスピース矯正は、メリットも多い一方でデメリットや注意点もあります。

治療を成功させるには、正しい知識と自己管理、そして信頼できる歯科医院選びが不可欠です。納得のいく治療を受けるためにも、事前の情報収集と相談を大切にしましょう。

矯正治療は見た目だけでなく口腔内の健康にも大きな影響を与える医療行為です。流行や安さだけを重視するのではなく、自分の歯並びや噛み合わせの状態に合わせて、ベストな選択をするよう心がけましょう。

お花茶屋ハル歯科・矯正歯科では、矯正歯科専門医が適切に診断し、患者様と相談しながら一人ひとりに適した治療法を提案いたします。

マウスピース矯正のデメリットが気になる患者様に対しても、わかりやすく丁寧な説明を心がけています。

マウスピース矯正を検討されている方は、ぜひお気軽にご相談ください。