
「冷たい物を食べたときにキーンと歯がしみる」
「ずっと痛いのは虫歯?それとも知覚過敏?」
突然歯にしみる症状が出る原因はさまざまですが、中でも代表的な原因が「虫歯」と「知覚過敏」です。
どちらも「しみる」という点では似ていますが、原因も治療法も異なるため、正しく見分けることがとても大切です。
この記事では、虫歯と知覚過敏の「構造や状態」「原因」「見分け方」「治療法」の違いについて詳しく解説します。
痛みがあるとつらいことはもちろん、治療しないままでは悪化してしまう可能性もあります。放置せず、早めに原因を確かめて適切な処置を受けましょう。
【構造や状態】虫歯と知覚過敏の違い

まずは、虫歯や知覚過敏はそれぞれどのような状態なのか、その違いから見てみましょう。
虫歯:歯が溶けたり穴が空いたりする病気
虫歯とは、口腔内の細菌が生成する「酸」によって歯が溶けたり、穴が空いたりする病気です。
歯は表面からエナメル質・象牙質・歯髄(歯の神経)の3層構造になっており、エナメル質が溶け始めるごく初期段階の虫歯では痛みがありません。
しかし、どんどん歯が溶かされて象牙質にまで進行すると、冷たい物や熱い物、甘い物がしみるようになります。
虫歯にはCO・C1・C2・C3・C4の5段階があり、進行すれば眠れないほど激しい痛みが起こることもあります。
虫歯は自然に治ることはないため、悪化させないためにも症状が軽いうちに歯科医院で治療を受けることが大切です。
知覚過敏:象牙質の露出によって刺激を感じる状態
知覚過敏は、エナメル質の摩耗や歯茎の退縮などの原因により、象牙質が露出することで刺激を受けやすくなった状態です。
歯の最も表層部分のエナメル質は、削っても痛みは感じません。しかし、その下の層の象牙質には無数に穴が空いており、刺激を神経に伝えるために痛みが起こります。
象牙質は本来エナメル質に守られていますが、何らかの原因によってそれが露出し、直接刺激を受けることで一時的なしみや痛みを感じます。
知覚過敏の場合、軽度であれば自然治癒することもありますが、進行していた場合は自然に治ることはなく、治療が必要です。
また、知覚過敏が「歯周病による歯茎の退縮」「歯ぎしり・食いしばり」などによるものであった場合、症状を引き起こしているそもそもの原因を治療しなければなりません。
知覚過敏であると考えられる場合も、歯科検診も兼ねて歯科医院で診てもらいましょう。
【原因】虫歯と知覚過敏の違い

虫歯と知覚過敏は症状が似ていても、原因は大きく異なります。
ここでは、虫歯と知覚過敏の原因の違いについて詳しく見ていきましょう。
虫歯の原因
虫歯の原因としては「細菌(虫歯菌)」が知られていますが、原因は一つではありません。以下の4つの要素が複雑に絡み合い、虫歯が発生します。
細菌 | ・口腔内の細菌(ミュータンス菌など)が、プラーク中で糖を分解し酸を生成する ・細菌の量や活動は口腔内の衛生状態や食生活に左右される ・細菌の数が多いほど、虫歯になりやすくなる |
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糖質 | ・歯を溶かす細菌のエネルギー源になる ・甘い食べ物や飲み物を多く摂取したり、間食の頻度が高いほど酸の産生が増え、虫歯が進行しやすくなる ・粘着性のある食品は歯に残りやすく虫歯リスクが高い |
歯質 | ・エナメル質の強さ、唾液の質や量は遺伝が影響し個人差がある ・エナメル質が薄い人、唾液の分泌量が少ない人は虫歯になりやすい傾向にある |
時間 | ・細菌が活発化する時間が長いほど、虫歯のリスクが高くなる ・間食の頻度が高い、だらだら食事をするなどの習慣は虫歯リスクを高める |
「糖質の多い食事」は「細菌」を増やし、虫歯になりやすい口内環境を作り出します。
そして、虫歯になりやすい口内環境でいる「時間」が長いほど虫歯リスクは高まります。
唾液には自浄作用があり、食べかすや細菌を洗い流して、虫歯を防ぎますが、「歯質」が弱かったり唾液の量が少なかったりすると、虫歯になってしまいやすいのです。
虫歯予防は、この4つの原因の重なりをなくすことが基本です。
知覚過敏の原因
知覚過敏は、象牙質が露出することで刺激や痛みに敏感になる状態です。象牙質の露出が起こるのには、以下のような原因が考えられます。
- 強すぎるブラッシングや間違った歯磨き
- 酸蝕歯(酸性の食品の影響)
- 歯茎の退縮
- 歯ぎしり・食いしばり
それぞれ解説します。
なお、ホワイトニング治療中にも知覚過敏の症状が現れることがありますが、これはホワイトニングで使う薬剤による影響です。多くの場合、中断することで数日で改善します。
強すぎるブラッシングや間違った歯磨き
強すぎるブラッシングや間違った歯磨き方法は、エナメル質の破損や摩耗を招きます。
研磨剤入り歯磨き粉を使い過ぎたり、硬い歯ブラシでゴシゴシ磨きすぎると歯面を傷つけてしまうため注意しましょう。
酸蝕歯(酸性の食品の影響)
エナメル質はpH5.5ほどで溶け始めるため、酸性度の強い食べ物・飲み物に長く触れていると、歯が溶けてしまうことがあります。
虫歯ではなく酸が原因で溶けてしまった歯を「酸蝕歯(さんしょくし)」といい、知覚過敏が起こりやすくなります。
歯茎の退縮
歯茎に覆われている部分を「歯根」といい、歯根はエナメル質で覆われていません。そのため、歯茎が下がると象牙質が露出してしまい、刺激を受けやすくなります。
歯茎が下がる原因としては、加齢、歯周病、誤ったブラッシング、歯ぎしりや食いしばりなどがあります。
中でも歯周病は、初期はほぼ自覚症状がないものの、重度では最終的に歯が抜け落ちてしまうこともある恐ろしい病気です。
歯ぎしり・食いしばり
歯ぎしり・食いしばりも、知覚過敏を引き起こす原因です。
寝ているときや集中しているときに無意識に起こる歯ぎしり・食いしばりでは、想像以上に強い力が加わっており、歯の欠け、すり減り、ヒビなどが起こることがあります。
すると、象牙質に刺激が伝わりやすくなり、痛みが起こるという仕組みです。
また、歯ぎしり・食いしばりは「くさび状欠損(WSD)」を引き起こす原因でもあります。
「くさび状欠損(WSD)」とは、歯と歯茎の境目が、くさび状にえぐれてしまう状態のことです。
欠損が大きくなると神経に達して強い痛みを引き起こすこともあり、ひどくなる前に治療が必要です。
【4つの見分け方】虫歯と知覚過敏の違い

虫歯と知覚過敏では「しみる」「痛い」といった共通の症状が見られますが、いくつかのポイントに注目することで、ある程度見分けることが可能です。
- 歯の見た目
- 痛みの強さの変化
- 痛みの継続時間
- 叩いたときの感じ方
ここでは、上記の4つのポイントから、虫歯と知覚過敏の見分け方について解説します。
ただし、ここで紹介する内容はあくまで目安であり、自己判断は困難です。
「知覚過敏だと思っていたら虫歯だった」というケースもあるため、一度歯科医院を受診しましょう。
1:歯の見た目
虫歯の場合、初期には「白く濁った斑点」、進行すると「茶色や黒色の変色」、「穴や欠け」が見られるようになります。
見た目に明らかな変化がある場合、虫歯が疑われるでしょう。
知覚過敏の場合、原因にもよりますが、基本的に歯の表面に大きな変化は見られないことがほとんどです。
ただし、歯茎の退縮が起こると、歯が長くなったように見えることがあります。
いずれにせよ、鏡だけでは口腔内を隅々まで観察することはできないため、歯科医院でのチェックを受けましょう。
2:痛みの強さの変化
知覚過敏の場合、食べ物や飲み物を口にした瞬間に痛みが走りますが、痛みの強さは一定であることがほとんどで、程度が変わることはあまりありません。
一方、虫歯はごく初期であれば痛みはありませんが、進行するにつれて痛みが強くなり、刺激にも敏感になる傾向があります。
最初は冷たい物にだけしみる状態だったのが、甘い物や温かい物、噛む動作でも痛みを感じるなど痛み方が変わった場合や、痛みが強くなった場合は、虫歯の可能性が高いでしょう。
3:痛みの継続時間
知覚過敏では刺激を受けた瞬間は痛むものの、数秒〜数十秒ほどと短時間で痛みが消えることが多いのが特徴です。
虫歯の場合は、痛みが一瞬で終わらないケースも少なくありません。
特に、虫歯が悪化すると何もしていなくても自発的に痛む「自発痛」が現れます。これは炎症が広がっているサインであり、ズキズキと眠れないほど強く痛むケースもあります。
「歯がずっと痛い」という場合は、知覚過敏ではなく虫歯の可能性が高いでしょう。
ただし、反対に「歯の痛みが急に治る(消える)」こともあります。
これは虫歯が治ったわけではなく、虫歯の進行によって歯の神経が死んでしまった可能性が考えられるため、なるべく早めに歯科医院を受診しましょう。
4:叩いたときの感じ方
歯科医院でよく行われる診断方法の一つに「打診」があります。器具を使って歯を軽く叩き、反応を見る方法です。
知覚過敏の場合、叩いたときにも痛みを生じないことがほとんどです。
しかし虫歯は、叩いた時に「ジーン」と響くような痛みを感じることがあります。
【治療法】虫歯と知覚過敏の違い

虫歯と知覚過敏は、治療法にも違いがあります。
虫歯の場合、歯科医院での治療が必要です。一方、知覚過敏は軽度であればセルフケアで改善されることもあります。
ここでは、虫歯と知覚過敏それぞれの治療法について解説します。
虫歯の治療法
虫歯の進行段階は以下のCOからC4までに分類されますが、知覚過敏と間違われやすいのは「C1」「C2」の段階です。
- CO(痛みなし)
- C1(痛みはないが冷たい物がしみることがある)
- C2(食べ物がしみる、ときどき痛む)
- C3(強い痛みがある)
- C4(神経が死に突然痛みが消失する、膿が溜まると再度痛む)
C1やC2の場合、まだ虫歯の範囲は大きくないため、虫歯部分を削ってコンポジットレジン(歯科用プラスチック)や詰め物(インレー)で修復する比較的軽度な治療で済むことがほとんどです。
しかし、C3に進むと神経が炎症を起こし、強い痛みが出て、根管治療(歯の神経が入っている内部の清掃・消毒)が必要になります。
C4では歯の大部分が失われ、多くの場合で抜歯が必要になります。
歯の寿命を延ばすためにも、痛みが出ているなら放置せず、早期発見・早期治療が大切です。早くに治療を始めるほど、痛みの少ない治療がしやすくなります。
知覚過敏の治療法
知覚過敏の治療法としては、以下のような方法があります。症状によっていくつかの方法を組み合わせて行うケースもあります。
例えば、歯周病によって知覚過敏が起きている場合は歯周病の治療が必要です。
- 知覚過敏専用の歯磨き粉を使う
- 薬剤・コーティング剤を塗布する
- 詰め物を詰める
- 歯ぎしり・食いしばり予防
- 歯の神経を抜く
上記の5つの治療法について、詳しく解説します。
知覚過敏専用の歯磨き粉を使う
知覚過敏の自宅でできるセルフケアや、歯科医院を受診するまでの応急処置としては、知覚過敏専用の歯磨き粉の使用が有効です。
- 知覚過敏を抑制する成分を含んでいる(「硝酸カリウム」もしくは「乳酸アルミニウム」)
- フッ素が含まれている
- 研磨剤無し
「硝酸カリウム」は神経の過敏性を抑制し、「乳酸アルミニウム」は象牙細管(刺激を伝える管)をブロックする成分です。
また、「フッ素」には、歯を強くする作用があります。
歯磨き粉を探すときは、上記のポイントを押さえて選ぶといいでしょう。
薬剤・コーティング剤を塗布する
歯科医院では、知覚過敏の部位に薬剤やコーティング剤を直接塗布する治療を受けられます。
1回だけでなく数回の塗布が必要になることもありますが、施術は短時間で済み、削ることがないため歯に優しい治療です。
詰め物を詰める
くさび状欠損のように露出範囲が広い場合は、欠損部分にコンポジットレジンを詰めて修復するケースもあります。
コンポジットレジンは歯の色に似た色をしているため目立ちにくいですが、経年劣化による変色、欠け、脱落が起こることもあります。
歯ぎしり・食いしばり予防
歯ぎしりや食いしばりによって知覚過敏が起こっている場合は、原因の治療が必要です。
ナイトガード(マウスピース)の使用、噛み合わせ調整、ボトックス注射などで治療します。
歯の神経を抜く
これまで紹介したような方法で治療しても改善が見られず、痛みが強く生活に支障が出ている場合は、歯の神経を除去することで痛みを感じないようにするケースもあります。
ただし、歯の神経を抜くと歯が変色したり、歯がもろくなったりするなどデメリットが多いため、あくまで他の治療法で改善が見込めない場合に最終手段として行われる方法です。
まとめ
知覚過敏は軽度であれば自然治癒の可能性がありますが、自己判断には限界があり、見た目に現れない虫歯や進行が早いケースもあります。
また知覚過敏と思っていたら実は虫歯だったという見逃しも少なくありません。
虫歯か知覚過敏かを判断するには、歯科医院の受診が必要です。歯がしみる・痛みがある場合は放置せず、歯科医院で検査を受けましょう。
お花茶屋ハル歯科・矯正歯科では、なるべく痛みの少ない治療を心がけています。
CTなどの先進検査機器による精密な診断を行い、丁寧な説明を行っておりますので、虫歯や知覚過敏なのかわからない症状でお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。