
「虫歯が痛いのは手遅れな症状?」
「すぐに病院に行けないけど、虫歯の痛みをどうにかしたい」
「虫歯が急に痛くなったのはなぜ?」
など、歯に痛みがあると、不安になってしまいますよね。
自覚症状として痛みが起こっている場合、虫歯が進行していると考えられるでしょう。しかし、痛みの原因が虫歯以外にある可能性もあります。
虫歯で痛みが出ている場合でも手遅れではなく、多くの場合、適切な処置によって治療可能です。
この記事では、虫歯が痛い時に考えられる原因、進行度と痛みの関係、痛みを和らげる応急処置方法などについて詳しく解説します。
虫歯が痛い時に考えられる原因

歯が痛いときにまず考えられるのが「虫歯」ですが、実は虫歯以外の原因で生じている痛みを「歯の痛み」として感じている可能性もあります。
急に痛くなることもあり、痛みを抑えるためには、歯科医院で原因を確かめ、適切な処置を行う必要があります。
ここでは、虫歯が痛い時に考えられる原因について詳しく紹介します。
虫歯が進行している
歯が痛い時にまず考えられるのが、虫歯です。
歯は外側から「エナメル質」「象牙質」「歯髄(歯の神経)」と3層構造になっており、虫歯がエナメル質に留まっている初期段階では痛みを感じませんが、象牙質にまで達すると、痛みが生じるようになります。
虫歯が悪化し、象牙質を突き抜けて歯髄にまで及ぶと、ズキズキと痛みが強くなり、眠れないほどの痛みが起こることもあります。
虫歯以外の原因がある
歯の痛みで多いのは虫歯ですが、実はそれ以外にも、以下のようなさまざまな原因によって痛みが引き起こされている可能性もあります。
放置すれば痛みが悪化する可能性もあるため、歯科医院で詳しい検査を受け、原因を特定することが大切です。
知覚過敏 | 象牙質が露出していることで、冷たいものなどが歯にしみる |
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歯根破折 | 歯の根にヒビが入り、噛んだ時に痛むことがある |
親知らず周囲の炎症(智歯周囲炎) | 親知らず周りが腫れて痛むことがある |
歯周病 | 歯周病で直接歯が痛むことはないが、痛みが歯由来か歯茎由来かわからないことがある |
非歯原性歯痛(歯や歯茎に問題のない歯痛) | 筋肉、神経、ストレス、他の病気が影響して起こる歯が痛むことがある |
虫歯の進行度と痛みの関係

虫歯の痛みは、進行度によって異なります。虫歯が悪化して段階が進むほど、痛みが強くなる傾向にあります。
- CO(初期虫歯):まだ痛みはない
- C1(エナメル質の虫歯):ほぼ痛みはない
- C2(象牙質の虫歯):食べ物がしみる、ときどき痛む
- C3(神経まで達した虫歯):激しく痛むことがある
- C4(末期の虫歯):激しく痛む、痛みが消失する
ここでは、上記の5つの段階について、それぞれ詳しく解説します。
CO(初期虫歯):まだ痛みはない
COは、ごく初期段階の虫歯です。「要観察歯」とも呼ばれ、まだ歯の表面に穴は開いていないものの、虫歯になる可能性のある状態を指します。
歯の表面がわずかに脱灰(白く濁った状態)していますが、自覚症状はほぼなく、歯科医院の定期検診で初めて気づくことも多いです。
COの場合はまだ痛みはないため、歯が痛む場合は、虫歯以外の原因か、見えない部分が虫歯になっている可能性が考えられるでしょう。
C1(エナメル質の虫歯):ほぼ痛みはない
虫歯がエナメル質まで到達すると、C1の段階になります。
C1になると茶色や黒色、灰色の変色が起こり、小さな穴が空くため、目で見た時にも「虫歯がある」とわかりやすい状態です。
C1の場合も、痛みなどの症状はほぼありません。
虫歯になっているため歯を削る治療が必要になるケースもありますが、この段階であれば削る範囲を小さく抑えられます。
C2(象牙質の虫歯):食べ物がしみる、ときどき痛む
C2は、虫歯がエナメル質を突き抜けて、象牙質にまで到達した段階です。
象牙質には歯髄(歯の神経)につながる無数の穴が空いているため、冷たいものや甘いものがしみたり、ときどき痛んだりします。
象牙質はエナメル質に比べて柔らかいため虫歯の進行スピードが早く、早めの治療が求められます。
C2を放置すると神経まで到達する可能性が高くなるため、この段階でしっかり治療を行うことが、痛みを防ぐために重要です。
C3(神経まで達した虫歯):激しく痛むことがある
C3は、虫歯が歯髄まで到達した段階で、ズキズキ強い痛み、鈍痛などが特徴です。
見た目でもわかる大きな虫歯で、何もしなくてもずっと痛む、眠れないほどの激痛など日常生活に支障をきたすほどの症状が起こることもあります。
C3の段階では、根管治療(歯髄を除去しきれいに掃除して薬剤を詰める治療)をして、被せ物(クラウン)で治療します。
C4(末期の虫歯):激しく痛む、痛みが消失する
C4は末期の虫歯で、虫歯に溶かされてしまい歯の大部分がなくなり、歯根だけになった状態です。
腫れや激しい痛みが起こりますが、神経が死んでしまうと、突然痛みがなくなることがあります。
もちろん、痛みがなくなったからといって虫歯が治ったわけではありません。
痛みが消えても虫歯は進行し続けており、歯根に膿が溜まると、再度腫れや激しい痛みが起こることもあります。
C4まで進行するとほとんどのケースで抜歯が必要になりますが、根管治療によって歯の保存が可能な場合もあります。
「もう手遅れ」と諦めず、気付いた段階ですぐに歯科医院を受診することが大切です。
痛い時と痛くない時があるのはなぜ?虫歯の痛みに波がある理由

「いつも痛いわけじゃないけど、ときどき歯が痛くなる」「夜に歯が痛くなる」など、痛みの波を感じる方も多く見られます。
ここでは、痛みに波がある時に考えられる理由をいくつか紹介します。
横になると痛い | 横になることで頭の血流が増え神経が刺激されて痛む |
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朝起きた時に痛い | 寝ているときの歯ぎしり、食いしばりの影響 |
夜に痛くなる | ・寝る時に横になるため頭の血流が増え神経が刺激されて痛む ・副交感神経が優位になることで歯の神経に行く血流が増えて痛む ・入浴によって血流が促進され神経が刺激されて痛む |
痛い時と痛くない時がある | ・温度差や食べ物による刺激がきっかけになっている ・炎症が治まったり強くなったりを繰り返している |
疲れや寝不足、体調不良などで免疫力が低下すると、細菌への抵抗力が弱まり、炎症が生じて痛むことがあります。
歯が痛む時に考えられる原因はいくつもあり、痛み方や症状だけで原因を明らかにすることは困難です。
歯科医院で適切な検査を受けて、原因に合った治療を受けましょう。
虫歯が痛い時の応急処置方法

「虫歯が痛いけど、忙しくすぐに歯医者に行けない」「夜間や旅先で急に痛み始めた」というときは、応急処置によって歯の痛みを緩和できることがあります。
虫歯が痛い時の応急処置方法は、以下の通りです。
- 鎮痛薬を服用する
- 正露丸を詰める
- 患部を冷やす
- 丁寧に歯磨きして口腔内を清潔にする
- ツボ押しを試してみる
- 痛みを悪化させる行動を避ける
それぞれ詳しく解説します。
鎮痛薬を服用する
歯の痛みには、鎮痛薬(痛み止め)が有効です。
歯科医院で処方された鎮痛薬があればそれを服用し、なければ市販の鎮痛薬を使用しても問題ありません。
代表的なものにはロキソニンやバファリン、イブプロフェン、カロナールなどがあり、薬によって特徴が異なるため、自己判断での服用を避け、薬剤師や医師に相談のうえで使用しましょう。
なお、鎮痛薬はあくまで一時的な対処法であり、痛みの原因を治すことはできません。痛みが治まったからといって放置せず、できるだけ早めに歯科医院を受診してください。
正露丸を詰める
下痢や腹痛の薬として知られる正露丸は、実は虫歯の応急処置としても活用されています。
正露丸の主成分である「日局木(もく)クレオソート」は歯の鎮痛や根管の消毒に使われており、痛みのある虫歯に詰めることで、痛みの緩和が期待できます。
ただし、これもあくまで一時的な応急処置であり、虫歯自体を治療する効果はありません。
患部を冷やす
虫歯の痛みがズキズキと激しいときには、患部を冷やし、炎症を起こしている神経周辺への血流を抑えることで、痛みを緩和できる場合があります。
直接ではなく、氷や保冷剤をタオルなどにくるんで頬の外側から優しく冷やしましょう。
長時間冷やしすぎると逆効果になる可能性があるため、様子を見ながら注意して行ってください。
丁寧に歯磨きして口腔内を清潔にする
食べかすが詰まったり、歯垢が溜まっていたりすると、細菌の繁殖が進んで痛みが悪化する可能性があります。
また、虫歯で歯に穴が空いている場合、そこに詰まった食べかすに圧迫されることで痛みが生じているかもしれません。
痛いからといって歯磨きを避けるのではなく、うがいや丁寧な歯磨きを行って口の中を清潔に保ちましょう。
特に歯と歯の間、歯茎との境目などは汚れが残りやすいため、正しい方法で丁寧にブラッシングすることが大切です。
デンタルフロス、歯間ブラシ、殺菌作用のあるうがい薬やデンタルリンスなどを併用すると効果的でしょう。
どうしても歯が痛くて歯磨きが難しいときは、ぬるま湯で優しく口をゆすいでください。
ツボ押しを試してみる
他の方法にさらにプラスする対策として、ツボ押しを試してみてもいいかもしれません。
手の親指と人差し指の付け根の間にある「合谷(ごうこく)」というツボは痛みに効くとされているため、痛気持ちいい程度の力で刺激してみましょう。
強い力で押しすぎず、「10秒程度押し込み、3秒程度離す」のを2〜3分ほど繰り返すといいとされています。
医学的なエビデンスに乏しい方法ではありますが、副作用もなく、手軽にできるため他の方法と合わせて試してみてもいいでしょう。
痛みを悪化させる行動を避ける
虫歯が痛むときは、痛みを悪化させる行動を避けることも大切です。
以下の行為は、痛みを強くしてしまう可能性があるため避けましょう。
- 入浴、サウナ、運動など血行が良くなる行為
- 飲酒・喫煙
- 痛みのある部分を触る、刺激する
- 刺激のある食べ物(極端に冷たい・熱いもの、辛いものなど)の摂取
痛みがある時はできる限り安静にし、早めに歯科医院を受診しましょう。
虫歯が痛いのを放置するとどうなる?

痛みのある虫歯は自然に治ったり、自力で治すことはできないため、歯科医院で治療せずに放置すれば悪化してしまいます。
激しい痛みや腫れが起こる可能性もあり、最悪の場合、歯を抜かなければならなくなってしまうかもしれません。
抜歯や根管治療、補綴治療(インプラント、ブリッジ、入れ歯)が必要になれば、通院回数も増え、費用もかかります。
「歯科医院を受診すべきかどうかわからない」というときは、歯科医院に電話して相談すれば、どうすればいいかアドバイスしてもらえます。歯を守るためにも、早めの行動が大切です。
虫歯が痛い時の歯科医院での治療方法について

虫歯治療の流れは進行度によっても変わりますが、強い痛みが出るC3・C4の場合は、以下のような流れで治療するケースが多いでしょう。
【歯を残せる場合の流れ】
- 診断
- 麻酔
- 虫歯の除去
- 型取り
- 人工歯の装着
【抜歯が必要な場合の流れ】
- 診断
- 麻酔
- 抜歯
- 歯の機能を補うための「補綴治療(インプラント、ブリッジ、入れ歯)」
ただし、痛みが強い場合、すぐに処置をしないケースがあります。理由は、以下の2つです。
- 強い炎症や痛みがあると麻酔が効きにくくなるため
- 炎症がある状態で無理に治療すると余計に腫れたり、治りが遅くなったりする可能性があるため
「歯医者が痛いのに治療してくれない」という患者さんの声を目にすることがありますが、これには上記のようなわけがあるのです。
不安や希望があれば、事前に電話で相談してから受診すると安心です。
虫歯治療は痛い?

歯科医院の受診をためらう方の中には、「虫歯治療はどのくらい痛いの?」と、痛みや不安をお持ちの方も多いでしょう。
歯科治療は、早い段階で治療するほど痛みを抑えられる可能性が高くなります。
例えば、歯の表面部分のエナメル質を削るだけであれば、痛みを感じることはほぼありません。
また、虫歯が象牙質や神経まで達してしまった場合でも、麻酔を使用することでほとんど痛みなく治療が可能です。
もしも痛みを感じた場合は、手を挙げるなどの合図をすれば、追加の麻酔、麻酔が効くまでさらに時間を置くなどの対処をしてもらえるため、心配しすぎることはありません。
まとめ
虫歯が痛い場合、象牙質や神経まで進行している可能性があります。
応急処置としては、鎮痛薬や患部の冷却などが有効ですが、どれもあくまで一時的な対処に過ぎません。
虫歯を放置すれば痛みが強くなり、抜歯しなければならなくなるケースもあるため、なるべく早めに歯科医院を受診して適切な治療を受けましょう。
お花茶屋ハル歯科・矯正歯科では、「表面麻酔・電動麻酔の使用」や「削る量を抑えるMI治療(ミニマルインターベンション)」など、患者さんの痛みや不安に配慮した虫歯治療を行っています。
痛みが心配な方、歯科医院に苦手意識がある方も、ぜひお気軽にご相談ください。